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  • 執筆者の写真田中

最近の音楽と文章指導について

更新日:2023年12月1日


音楽関係の道を志す生徒の指導に携わる関係で

最近は音楽に関する論文やエッセイを読んで

音楽についての話をするという機会が

増えているのですが、

この領域もやはり面白いなと感じます。


特に最近の日本のポップミュージックは

信仰の失われかけた現代の日本を象徴するかの如く、

様々なジャンルのコード進行が

入り乱れて使われるという

独自な進化を辿っているようなのですが、

こうした乱れが成立するのは、

この国ならではの現象なのではないか

と思った次第でした。


そして、最近の音楽家のコメントなどから

その心理を読み解いていくと、

どうも、有名な人の殆どが、

売れるための音楽を自分やりたい音楽と区別し、

意識的に売れる音楽のベールの内に

自分の音楽をひっそりと仕舞い込む、

ということを音楽作成の際に

意識的に行っているようなのです。


私としては、最近のポップミュージックは

ガチャガチャしていて

耳障りな印象があったのですが、

そのような言葉を元に聞き返してみると、

確かに、敢えて人を惹きつけるための箇所と

その人が志向する音楽の箇所との差は

けっこうはっきりしていることに気が付きます。


ここで更に思い出したのが、

ロラン・バルトのアマチュア(愛好家)精神の箇所です。

「「愛好家」(amateur)」(絵や音楽やスポーツや学問を嗜みながら、名人の域をねらうとか勝ち抜こうなどという魂胆はない人)。「愛好家」は、自分の享楽に連れ添って行く(「amator」とは、愛し、そして愛しつづける人、ということだ)。それは決して英雄(創作の、業績の、ヒーロー)ではない。彼は、記号表現の中に「優雅に」(無報酬で)腰を据えている。音楽や絵画の、そのまま決定的な材質の中に落ち着いている。彼の実践には、通常「ルバート」(属性のために物を搾取すること)は一切含まれない。彼は、反ブルジョワ芸術家である―たぶん、いずれそうなるはずである。

『彼自身によるロラン・バルト』

アマチュアは消費者ではありません。アマチュアの身体と芸術のつながりは大変緊密で、活き活きとしたものです。それが最も麗しい点であり、そこにこそ未来があるのです。しかし、そこでは文明の問題にぶつかります。技術の発展と大衆文化の発展の結果、演奏家と消費者との溝が恐ろしく大きなものになるのです。我々は消費社会に生きています。敢えて言えば、ステレオタイプの戯れに生きているわけですが、アマチュアの社会というのは、まったくそうしたものではありません。(...中略...)疎外された時代(独裁的あるいは封建的な社会)ではあったが、指導的階級の中に本当のアマチュアリズムが生きていた時代というのがありました。本当のアマチュアリズムを、そうした社会とは別のところに、そして「エリート」とは別のところに見出すこと、それが必要なことでありましょう

1975年、『マガジン・リテレール』「ロラン・バルトの20のキーワード」


ここで語られるアマチュア精神とプロ精神、

どちらが正しいという話では有りませんが

ポップ・ミュージック界を象徴する音楽家たちが

この狭間で音楽を生み出そうとしてるというは

いかにも今らしいなと思います。


生徒たちとはたいていこんな風に、

誰かの文章を元に生徒の興味分野について話をし、

生徒の考えを膨らませられるだけ膨らませてから

文章を書いてもらい、指導をする、

という形を採っているのですが、

「読む」、「話す」、「書く」

の三者は不可分なのだなと強く感じます。


文章の指導だけをすることによって

単純な文章を書く技術は習得できるかもしれません。

しかし、技術があれば面白い内容が書けるか

というとそうではありません。

面白さは人それぞれではありますが、

その人の発想や感覚が広がりそうな言葉や書物を手渡し、

話をしていくと、大抵の場合は

すでにある発想や感覚が刺激され、

話は広がりを持ち、面白いものになっていきます。


この広がりを書き言葉にするのは

難儀なことではありますが、

広がりを知った状態で文を書くのと、

ただ受験の過去問を解くために文を書くのとでは、

書く行為への向き合い方や得るものが違ってきます。


最近の大学入試は

旧AO入試のような面接、志望理由書、小論文

で受かる形式が増えています。

こうした形式の入試の大まかな趣旨は、

生徒の内的な資質を見るためにあります。

当然ですが、何を書くかが大事なわけです。


しかし、現在の受験指導の多くは

受かるための技法練習に終始しています。

「文末表現で〜を使ってはいけない。」

「接続詞はこう使え。」

「自分の考えはこうまとめろ。」

このような技術練習も必要ではありますが、

技術を使って何をするかの方に

もっと目を向けるべきではないでしょうか。


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