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  • 一裕 中嶋

教員採用、これから必要になる先生像

現在私は、総合型選抜入試・海外大学受験向けの塾の塾長として塾の経営や授業を行う傍ら、高校の探究活動の非常勤講師、学校コンサル、人材紹介業の営業等を行っています。今回は、学校教育に様々な接点がある立場から、教員の採用状況やトレンド、また、今後必要となる人物像について私見を述べていきたいと思います。

現状の教員採用の傾向

上記の文科省のデータhttps://www.mext.go.jp/content/20191223-mxt_000003296_111.pdfより転載)が示すように、公立教員の採用倍率は年々下がっています。その結果として、全体の採用傾向としては学校の先生は売り手市場になりつつあるわけですが、私の身の回りの学校現場では、英語の先生が足りていないという声をよく聞きます。要因としては、まず、ネイティブの先生がコロナによって帰国するケースや、オンライン英会話需要増によって英会話教室に転職するケースが増え、海外留学や海外研修が得意な英語の話せる先生も他業種へ流れるケースが増えているためだそうです。

 逆に言えば、今英語の教員免許を持った先生は、学校への就職は以前よりもしやすい状況なのかもしれません。ただ英語科以外は特に学科毎の採用状況の差はないかと思います。


これから求められる先生

今後の学校の採用状況を語る上でもっとも重要な要素の一つが、2020年より始まった入試改革です。英語の4技能試験などで話題にもなりましたが、この入試改革で大学受験の方法に変化が生じたことで、学校で重宝される先生のタイプにも変化が生じています。まず重宝されるようになったタイプの一つが「文章指導」のできる先生です。入試改革では、AO入試(現総合型選抜入試)の試験内容が細かく規定され、大学側でも、より専門的な知識、関心を有した学生を確保すべく、試験が難化しています。中でも、レポートに関する課題は難しくなっています


これは、駒澤大学文学部のレポート課題ですが、このように大学の試験で課されるようなレポート課題が全国的に増えてきています。そして、それに応じて、文章指導のできる先生の需要も高まっているというのが昨今のトレンドです。今では、学校選抜、総合型選抜入試を経て大学に入学する学生が57%までに上っています。こうした状況に学校は対応をしなくてはならないのですが、学校の先生は教科書に対する指導力は高いものの、学術的な論述経験や文章の指導経験に乏しく、現状の課題に対して対応しきれていないというのが現状です。

 そのため、学校の代わりに塾を使う生徒も増えていますが、塾で教える講師も大学生がほとんどで、彼らの多くは学術的な論述経験に乏しく、相応の授業を実施している塾は少なく感じます。


「探究」ができる先生

次に必要とされる先生タイプは、「探究」学習に通じた先生です。2022年から探究学習は必修化されます。しかし、この「探究学習」、教育界隈ではトレンドワードになり多くの教材開発が急ピッチで行われていますが、まだ明確な共通解は見つかっていない状況です。

 そんな「探究」学習に対し、筑波大学大学研究センターの稲永由紀氏による報告書(http://www.rcus.tsukuba.ac.jp/information/Rcus%20Working%20paper%20No_12.pdf)はこのように原因を指摘しています。


「探究学習」の導入が難しい大きな理由として友野(2018)は、探究活動で一番の課題は「生徒自身が問いを立てられるか」にあり、問題意識を持つことと主体性とは表裏一体であり、内発的動機を引き出すための仕掛けが必要であると指摘している。生徒自身が問いを立てるというのは探究活動と調べ学習との分水嶺でもあるが、調べ学習以上にハードルの高い「探究」に生徒のプロファイルがついていけるかどうかという課題はどうしてもつきまとう。総合的な学習の時間を含め「探究」をともなった各種の学習活動事例の蓄積の大半は、ある程度の学力が保証されていることを前提でしていると理解されてもおかしくはない。ただし、指導する教員の側から見れば、友野が指摘するような内発的動機を引き出す仕掛けの設定は教員側の課題でもある。その根底には、教員自身が、生徒に経験させようとする「探究」の過程を日常繰り返しているか、またこれまで経験してきたか、という問いが横たわっていることになる。

稲永氏の報告書では、「探究」を実践するには、生徒自身が問いをたてる必要があり、またこれを実現する為には教員サポート、すなわち学術経験が肝要であるということが述べられています。更に読み進めていくと、現在の先生のほとんどがこの学術経験に乏しいことがデータと共に論じられているのですが、この学術経験を高校現場において再解釈していくと、これは「外」での活動経験(フィールドワーク等)と言い換えられるのではないでしょうか。

 私自身、これまで学会で論文をいくつか発表してきましたが、ここで稲永氏が指摘する程度(子供たちが論を立てるためのサポートをする程度)の学術経験であれば、割と先生方もすぐに身につくのではないかと思います。

 むしろ問題となるのは、如何に「外」の世界を生徒に見せてあげられるかという点です。多くの生徒が自ら興味を持つテーマは、ゴミ問題など身の回りに関するものが多く、そこで起こる問題(社会問題)を解決すべく個人で調査等を行うと、ほぼ必ずNPO法人や企業の存在に行きつきます。ここで、どのように生徒を(可能な限り)失礼なく外部団体と繋げてあげられるか、フォローしてあげられるか。これによって探究の質は変わるというのが、私がこれまで学校現場で様々な探究活動を行って感じてきたところです。

「外」=社会での生々しい体験。この原体験に触れさせてあげることで、生徒たちは本当の意味での「問いを立てる」が実践できるようになります。例えば、途絶えかけた国指定重要無形文化財のお祭りを復興する企画に参加した生徒は、日本の文化について真剣に考えるようになり、アフリカの貧困を実際に行って感じた生徒は真剣に国際協力について考えるようになります(例としてわかりやすいものを挙げましたが、このように大げさなものでなくても、「外」の生々しい体験のできる場はいくらでもあります)。そうなると、大人がたいして介入しなくても、生徒は勝手に自ら考え行動するようになります。大人は、せいぜい、彼らが論を立てる際の相談に乗ったり、失敗したときに話を聞いてあげたりすればよいのです。何より大切なのは生徒に対して「外」の世界をきちんと見せてあげることであり、これを行えるだけの「外」との繋がりを先生が生徒に持たせてあげられるかです。

 なので、もしも既に社会で何かしらのNPO法人に所属して個人的な活動をしているとか、海外での経験を持っているといった教員免許保持者がいれば、今後学校での活躍機会は増えるはずです。


まとめ

上述の2つのタイプ以外にももっと必要な先生はいると感じる方も多いかと思います。しかし、学校経営を考えていくうえで欠かせない出口戦略に好影響を及ぼす先生タイプで見ると、総合型選抜入試の利用者が増えた昨今、この2つの先生タイプがこれからのニーズとして高まっていくと私は考えています。

 もしも、今教員を志す方がいたら、今後は「探究」や「文章指導」を意識した準備を行っておくことをおススメします。

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